Serende vol.20

  • 2015-10-26

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オリンピックより盛り上がるロンドンの住宅事情
2012年、3度目のオリンピックの開催が予定されているイギリスの首都ロンドン。オリンピックの開催に盛り上がるロンドンの住宅事情はオリンピック以上に加熱しているとのこと。早速、取材に行ってまいりました。現在、ロンドンの住宅事情で最大の話題は、「世界最高額のマンション」と呼ばれる「ワン・ハイド・パーク」です。2011年1月に竣工したばかりの本物件の最高成約価格は1億4千万ポンド。現在のレートで約176億円(1ポンド=126円)。広さは推定1800㎡超。坪約3220万円の物件となります。数字に驚いてしまいますが、これは1棟ではなく1住戸の価格です。 ワン・ハイド・パークの物件のポイントとしては、 1.都心でありながら、南面がハイド・パーク(ロンドンの中心的公園)に隣接している立地ポテンシャル。 2.隣接するロンドンを代表するラグジュアリーホテル”マンダリン・オリエンタル ハイドパーク”と地下の専用通路で連絡されており施設とサービスが利用できること。 3.映画館やプールに始まる贅沢な共有施設。 4.眼球の虹彩認証システム、防弾ガラス、パニックルーム(緊急避難用の隠し部屋)などのセキュリティーなどが挙げられます。 世界最高額のマンションとして前評判が高く、富裕層の注目を集めていたらしいのですが、驚く事に、全部で86室のうち、竣工時に約60%近くは契約済みになっていたということです。中東や中国の富裕層が購入していると見られていますが、真偽の程はわかりません。
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20_3もちろんイギリス全体の経済環境は世界経済とリンクして悪化しており、住宅市場も前年比ダウンを続けています。しかし、ロンドンの住宅(特に一等地)に限ると話は別のようです。世界中から投資マネーが集まり、住宅価格は今も値上がりしています。その、最たる例が「ワン・ハイド・パーク」といえます。そもそも、イギリスの住宅不足は深刻で、ブラウン前首相が毎年の新築住宅件数を24万件に上昇させる計画を打ち出したほどです。(専門家によれば、30万件以上建てなければ住宅不足は解消しないとの声もあったようです。)中でもさまざまな規制から、住宅地を開発することが難しいロンドンでの住宅不足は深刻で、圧倒的な”売り手市場”になっています。ただでさえ、売り手に有利な価格が付くマーケット。そこに、中国やロシア、中東、ヨーロッパの富裕層のお金が集まり、人気エリアを中心に物件価格が上昇。上昇する物件に投資家のお金が集まり、値上がりを加速させているのが現状のようです。日本でバブル経済を経験した身から言えば、永遠に上がり続ける不動産価格はありえ無いと思うのですが、「ロンドン‐東京プロパティーサービス」(ロンドンにて25年の不動産売買の実績をもつ不動産会社)によれば、ロンドン(特に一等地)はとにかく別格とのこと。そして、この上昇を続けるロンドンの住宅を買いに来ている日本人も増えて来ており、日本経済が冷え切っていたこの10年に限っても、高いパフォーマンスを実現しているそうです。今後、このロンドンの熱い住宅市場がどのように変遷するか、セレンデとしても注目していきたいと思います。

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20_5ロンドンのお宅訪問
高級住宅街メイフェアエリアのパークストリート沿い。コンバージョンフラットと呼ばれる住宅のツーベットタイプを見学。(コンバージョンフラットとは、もともと戸建てだったものを集合住宅に改造したもの。)ロンドンの住宅らしいレンガ造りの美しい外観。道路に駐車されているのは高級車ばかりでこのエリアに住む層の所得の高さが垣間見えます。今回見学するのは2階部分。外から見る限りでは狭いイメージしか湧かなかったのですが、そのイメージは良い意味で裏切られました。セパレートしたリビングとダイニングは、どちらも広さは15畳以上は取られており、暖炉付き。独立したキッチンは美しく、充分な広さがあり2つのベットルームもそれぞれ、12畳以上ある広さを確保。しかもベットルームそれぞれにお風呂とトイレが備え付けられていました。広さは150㎡あるとのことで納得です。この物件の賃料は週に1800ポンド。(ロンドンの賃料は週ごと計算となります。)実質の月賃料に直すと7800ポンド(約98万円)になります。一瞬高すぎるとも思いましたが、ロンドンの一等地でこの広さ、東京の青山・六本木と比べれば、納得の料金と言えます。備え付けの家具やベットも”上質”。どこを切り取っても”絵”になる住宅でした。

20_7_1イギリスの住宅観
イギリスの住宅観は、日本人のものと違います。まず、イギリスの住宅の大半は、いわゆる分譲住宅で、日本のような注文住宅はありません。何十戸、時には何百戸で計画される住宅街は、統一した街並みで美しく整えられます。街並みの美しさが、売れ行きを左右したからです。しかし、間取りへの関心は、造り手・買い手ともに薄いらしく、画一的なものばかりです。住宅のプランも間口が狭く、奥に長いものになっています。そして、都市部では、今回見学したようなテラスハウス(3戸以上の連続したハウス)が多く建てられています。造り手側からすれば、より効率的に安く建てられるからです。日本人的な感覚で言えば、「建て替える時にはどうするんだろう」という不安が浮かびます。しかしイギリスでは、「住宅は永遠に保つ」と考えられているようで、「建て替え」の心配はしていないようです。事実、日本の住宅の寿命は26年しか無いのに対し、イギリスでは75年と言われています。建てた家が社会のストックになって行き、売る時にはより高い値段で取引されているそうです。古いものに価値を見出す国民性にもよるとは思いますが、住宅の在り方としては、こちらの方が理想的です。もちろん、古くなった物件は、水まわりでトラブルが起きたりする事も多く、便利な生活に慣れた日本人には、水まわりのトラブルはかなりの苦痛です。しかし、それらの利便性を手放したとしても、年を経るごとに風合いを増していく住宅が、日本でも増えていくことを願いたいものです。

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